吉祥寺の美容院の女性と人生の不思議
もう随分と前のこと
吉祥寺に住んでいた時なので、もう随分と前のことだ。
僕には青山に行きつけの美容院があった。
でも、吉祥寺から青山に行くのも面倒になり、吉祥寺にいい美容院がないかな、と探し。そして、吉祥寺のある店に行くようになった。
そこは良い店で。店長の女性に切ってもらっていた。
シャンプーなどはアシスタントの人がやり。軽く会話をしたりする。そんな時……
「私、吉祥寺に住んでいるんです。一緒ですね」
あるアシスタントの女性が笑って話した。
僕はその時のことはよく覚えてないのだけど。この言葉はスゴく覚えていて。
彼女は年下だけど、どこか、しっかりした。感じの良い女性だった。
月日は流れ…
……それから月日は流れ。そのアシスタントの女性はスタイリストになり、お店でも中心的な人になっていた。
僕はまだ店長に切ってもらっていて、彼女はスタイリスト。
そうなると、彼女にシャンプーをしてもらうことなどなくなり、接点も特になくなった。
僕は何度か「(スタイリストになったことを)おめでとう」と言おうと思っていたけど、きっかけがなく、言わずに時が過ぎた。
その後、僕は恵比寿に引っ越し、さらに次の街に引っ越し。
その頃になると、その美容院には行かなくなっていた。
お世話になった店で通いたかったけど、仕事が忙しくなり、吉祥寺までは行けなかった。
アシスタントだった彼女とも会うことはないだろうな、と思った。
人生は不思議だ
ところが、人生は不思議だ。
今、その彼女と時々、連絡をとったりしている。
彼女は結婚し、今は娘さんも生まれている。
とてもかわいい子で。彼女のFacebookの投稿を見ると、アシスタントだった彼女がかぁ、と感慨深い気持ちになる。
今日
今日、彼女は「娘が風邪をひいた」とFacebookに投稿していた。
彼女は仕事を抜け出すことも出来ず、お弁当をつくり、お子さんをどこかに預け、「娘よ。頑張れ。私も頑張る……」と書いてあった。
仕事も娘さんの世話も、大変だな、と思いつつも、なぜか、良かったね、と思っていた。
本当に良かった、と。
追伸:今さらだけど、スタイリスト。おめでとう。
本当に長い時間が経ったけど……。