吉田沙保里を破ったヘレン・マルーリス選手の想いとは…
吉田沙保里を破ったヘレン・マルーリス
リオデジャネイロ五輪。レスリング女子53キロ級。
吉田沙保里は決勝で惜しくも敗れた。吉田を破った相手はヘレン・ルイーズ・マルーリス(マロウリスという表記もあり)。
米国のレスリング選手、現在24歳だ。
吉田沙保里はこう語っていた…
この大会の準決勝後、吉田沙保里はヘレン・マルーリスについて、こう語っていた。
「一緒に戦っていたので見てなかったんですけど、ヘレン(マルーリス)が勝ったということでちょっとビックリしています。でもヘレンは『ずっと吉田を倒すためにやってきた』と(言っていると)いうのを聞いたことがあって。
過去に2、3回戦っていて負けたことはないんですけど、そこから4年たって伸びてきていると思うし、決勝の大きな舞台で戦うのですごい気合いは入っていると思うので。そこは私もこれまで以上に気合いを入れ直して金メダル目指して頑張ります」
12歳だった…
吉田沙保里が2004年、アテネオリンピックで優勝した時、ヘレン・マルーリスは12歳だった。そこから「吉田に勝つ」という想いでレスリングを続けてきた。
その後……。
2011年、2012年とヘレン・マルーリスは吉田と世界選手権で戦い、いずれも吉田がフォール勝ち。
しかも2012年は世界選手権55kg級の「決勝」だ。マルーリスはあと一歩のところで世界の頂点に立てなかった。
世界の頂点に
しかし、2015年。世界選手権55キロ級でマルーリスは優勝し、世界の頂点についに立つ。
一方、吉田沙保里は53キロ級で優勝。
マルーリスは吉田に勝ったわけではなかった。
勝負はリオ五輪に
そして、勝負はリオ五輪に。
世界選手権で、世界の頂点に立ったヘレン・マルーリスは12歳の頃からの「吉田沙保里に勝ちたい」という想いを成し遂げるように、決勝で勝負に挑んだ。マルーリスの前には、12歳の頃から求めてきた吉田沙保里が立ったのだ。
結果は……吉田沙保里に打ち勝ち、吉田の五輪4連覇を阻み、13連覇中の世界選手権と合わせた連続世界一の記録を「16」でストップさせた。
勝った後のヘレン・マルーリスの姿は印象的だった。
吉田沙保里に勝ちたい、金メダルを獲得したい、それは強烈な想いだったのだろう。
試合後、勝って喜ぶわけではなかった。
人目もはばからず、ただ泣いていた。表彰式でも、だ。
ヘレン・マルーリスにとって、幼い頃からの大きな想いを成し遂げた、とても大きな勝利だった。
吉田沙保里はよく頑張った。
日本のために、と本当に強い想いで。
でも、ヘレン・マルーリスの想いも強かった。それはまた素晴らしいものだった。