女性警官が素晴らしかった「こんなことは人生で一度たりともなかった…」
ある街の女性警官
交番。
ある街に仕事で行く度に、その交番の前を通り過ぎる。
交番の前にはいつも警官が直立していて。随分前のある日、新人らしい女性警官が立っていた。
見る限り、明らかに新人だった。何かがぎこちない。
ただ、交番の前を通り過ぎると……
「おはようございます!」「こんにちは!」などと挨拶される。
これには驚いた。
あなたは交番の前で立っているような警官に挨拶をされたことはあるだろうか。
地方ならともかく、東京。しかも都心で、交番にいる警官から挨拶されるなんてことはまずない。
僕の人生でも一度たりともないと思う。
本当に驚いた。
それだけ驚いたこともあるし、警官に挨拶する習慣も僕にはないので、そんな彼女に対し、僕は軽く頭を下げることしかできなかった。
他の人がどのように対応したのかわからないけど、おそらく多くの人がその女性警官の挨拶に対し、挨拶は返さなかったように思う。
誰一人挨拶をしない中、挨拶を続ける彼女を見て、僕は心の中で「本当に頑張ってるな」と思っていた。
挨拶は続いた…
僕は仕事でその街に行っていたので、毎日のように行っているわけではないけど。彼女は晴れの日だけではなく、雨の日も挨拶を続けているようだった。
「おはようございます!」「こんにちは!」と。
夕方以降に行くことはなかったけど、きっと、夕方も「こんばんは」などと挨拶をしていたのかもしれない。
それを見る度に「凄いな。よく頑張るな」と感じていた。毎日毎日、挨拶を続けているのだから。
ところが、半年ほど経ったある日。
彼女は挨拶をしなくなった。
交番の前で直立はしているのだけど、挨拶をしなくなったのだ。あれだけ続けていたことだ。きっと、彼女の中でも挨拶をやめることに葛藤はあっただろう。
ただ、彼女が悪いわけではない。僕らは誰1人挨拶を返さなかったし、他の警官も挨拶などしないのが通常なのだ。そんな中、彼女は半年も続け、本当に頑張ったのだと思う。
ただ、彼女自身が自分のしていることを「意味がない」ことだと感じてしまったのかもしれない。
今、そのことを考えると、本当に悪いことをしたと思ってしまう。
ここで書いても彼女に伝わりはしないと思うけど、それでも、彼女の半年ほど続けた頑張りは無駄ではなかったと思うし、感謝はしている。
彼女の挨拶によって、暖かい気持ちになったのは僕だけではないはず。僕以外にも彼女の半年間の頑張りに気づいていたと思う。
今日。その街の交番の前で立っている彼女を見たけど、心の中で本当に感謝してしまう。
「ありがとう」と。
「半年間、ありがとう」と呟いてしまう。