誰もいない寂しい世界でも幸せになれる「1つのこと」
HがくれたWalkman
「これ聴いてみて」
学生の時、友人HがWalkmanをくれた。
そこには彼が「凄いから……」と言っていた曲が入っていた。Hは日本人なのだけど、ハーフのような顔つきで当時は不良の方だったように思う。
僕はそんなHが好きで、彼が熱くすすめるのだから、よほどの曲なのだと思い、Hの家から自宅に帰るバスの中でそのWalkmanで曲を聴いた。
時間は夜9時頃
バスには人がそれほど乗っていなくて、薄暗い。
でもその暗さが瞬時に明るくなるような体験だった。
今まで、イヤフォンで曲を聴く習慣がなかった僕は、あの時の感動は覚えている。
幼い頃から聴いていたスピーカーとは違い。直接、音楽が耳に入ってくる。
(もちろん、Walkmanをくれる、彼の太っ腹さにも驚いていたのだけど……)
そして……。
音量を大きくしてみた。
すると、さらに気持ちが上がる。人がほとんどいない薄暗いバスの中で、最高の感動を味わっていた。
あの時に学んだこと
僕はあの時に色々なことを学んだ。
薄暗い。誰もいないような場所でも幸せな気持ちになれること。
そして、音楽の力に対する考え方も変わった。
その気持ちは今も変わらない。
僕の中で気分を上げるもの。
情熱を高めるものの一つは「音楽」で。
音楽を聴いていると、大抵、自分が「落ちる」ことはない。
逆に何か不安になったり、落ち込む時は音楽を聴いていない時。
今はいい音楽。美味しい珈琲。それに夢中になれる仕事。
それらがあれば、結構「幸せ」だと思う。
人がほとんどいない薄暗いバスの中でも最高の感動を味わえるのだから。
最後にもうひとつ
「音楽」の力については、さまざまなことが言われている。
ジョージタウン大学統合神経科学・認知科学研究所のJosef Rauschecker博士はこう語っている。
「音楽は、会話や言語よりも古いものであるという理論が存在しています。研究者の中には、言葉は音楽が進化して生まれたものだという人もいます」
確か、ある音楽家が「音楽というのは非常に根源的なもの」と語っていたけど、まさにそうなのだろう。
人類の歴史の中でも古くから存在し、長きに渡って、人類に貢献してきたものなのだろう。
音楽と脳の関係
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは「音楽」と「脳」の関係を分析した。
脳内の血液の動きを視覚化する最新の装置『fMRI」を活用し、脳の動きを測定。すると、「話し声」を処理するのとは別に音楽に特化した神経経路が存在することが明らかになった。
人間の脳にある「聴覚野」では話し声と音楽を処理するエリアは分離していて、話し声の時は話し声のエリアだけが反応。音楽の時は音楽のエリアだけが反応する。
ただし、歌詞のある歌の時はその2つが動く。
音楽は脳を活性化する上でも非常に役立つ。さらに、脳を活性化させたい時は歌詞のある歌を聴くのも1つの方法だといえるだろう。
僕が、ほとんどいない薄暗いバスの中でも最高の感動を味わえたのは、歌詞のある歌で。まさにその力だったのかもしれない。
参考:Distinct Cortical Pathways for Music and Speech Revealed by Hypothesis-Free Voxel Decomposition