全米オープン初勝利!王者バブリンカの「強さの秘密」
バブリンカ、全米オープン初優勝
テニスの4大大会、全米オープンの最終日。
男子シングルス決勝は、スタン・バブリンカ(ワウリンカ)が大会2連覇を狙っていたノバク・ジョコビッチに勝ち、大会初優勝を成し遂げた(錦織圭が全米オープン準決勝で敗れたのもこのバブリンカ)。
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逆転の勝利だった。
バブリンカは4大大会で2014年の全豪オープン。2015年の全仏とつづき、本大会で3勝目。
バブリンカの武器で有名なのは、彼の代名詞バックハンド。
ジョン・マッケンローが「テニス史上最強」とも絶賛するほどのバックハンド。
実際、試合後のYahoo!ニュースのコメントなどは次のような声が多い。
「この人のバックハンドはマジ強烈。現役最強クラスといってもいいんじゃないか?」
「あなたの片手バックハンドは世界一だ」
サーブは最速230キロ超。そこに、このバックハンド。
それでも、以前はムラがあった。しかし、それがここ最近、圧倒的な強さをもつようになった。その「強さ」の秘密をバブリンカ本人やライバルの言葉から見ていきたい。
4大大会に強い
「バブリンカは大きな試合でベストなプレーをする」
これはジョコビッチの言葉。
バブリンカはとにかく大きな試合、4大大会(グランドスラム)で勝負強い。
ジョコビッチと同様のコメントがネット上のコメントに散見されるほど、4大大会に圧倒的に強い。
「バブリンカはマスターズ1000は1勝、グランドスラムは3勝。バランスがおかしい。グランドスラムに強すぎる」
「マスターズでは割りとさらっとジョコに負けるけどグランドスラムでは、本当強い!おめでとう、スタン!後はウィンブルドンでキャリアグランドスラムだ!!!なんと効率良いこと」
「グランドスラムに強い」。そう言われるほど、4大大会(グランドスラム)とそれ以外の大会での差が大きい。
逆をいえば、バブリンカは4大大会に焦点をあて、勝負しに来ていると言える。実際、リオデジャネイロ五輪でさえ、欠場している。それくらい、4大大会に焦点をあて、勝負をかけにきている。
強化された「メンタル」
全米オープン準決勝。錦織との一戦では、第1セットの錦織のプレーは完璧で、完全に錦織の流れだった。実際、この時のバブリンカの心境は次のとおりだった(試合後のインタビューの言葉)。
「第1セットの彼は、素晴らしかった。常に攻撃的で、自分には打つ手がなかった」
ただ、バブリンカは相手選手をそれだけ認め、打つ手がないほどの状況でも諦めることはなく、試合の中での解決策を見出していった。
「(この2年は)メンタルを最も変えた。常にポジティブな姿勢を貫き、試合の中で解決策を見つけられるように心がけている」
そして、状況を少しずつ変えていく。
ボールをより重く打ち、より速く打ち、錦織を走らせようとしたのだ。
「少しずつ、少しずつ、状況を変えようとした。よりボールを重く、速く打ち、彼を走らせようと思った」
不利な状況でも決して諦めず、勝機を見出し、少しずつ有利な状況を創り出していく。
そして、彼の武器バックハンドは、会場の雰囲気そのものを変えて、彼の流れになっていく。目の前のことに集中し、少しずつ、状況を変えていったのだ。
決勝後のインタビューでもこう語っている。
「優勝のことを考えずに一生懸命プレーしたことがよかった」
「一歩ずつ上に上がろうと頑張ってきた。自信を持ってプレーできるようになった」
目の前のことに集中し、一歩一歩前進する集中力、そしてメンタル。それによって、自信を持ってプレーできるわけです。
人間性「相手を認め、感謝する」
先ほどのバブリンカの錦織への言葉。
「第1セットの彼は、素晴らしかった。常に攻撃的で、自分には打つ手がなかった」
彼は自分が破った相手であっても、相手を認める。「自分には打つ手がなかった」とまで述べるくらいに。
決勝で破ったジョコビッチに対してもこう語る。
「ノバク(ジョコビッチ)は偉大なチャンピオン。あなたのおかげで今の私がある」
これは選手に対してだけではない。お客に対しても「大勢のファンにも見てもらえて幸せ」と語り、スポンサーに対しても、常に心配りをする。
印象的なのは準決勝の試合後の会見。
記者の一人が机にあるエビアンのボトルに対し、「それをどけてくれないか、あなたの顔が見えないんだ」と言う。ところが、バブリンカはこう答えた。
「これ、どかしても大丈夫? テレビに映る場所に置いた方がいいの?いやいやダメだよ! エビアンは僕のスポンサーでもあるんだから!」
エビアンは大会の公式スポンサー、それに対して気を遣うわけです。まさにチャンピオンの振る舞いで、です。相手を認め、感謝する、この人間性も直接的でないにしろ、彼を力強いものにしている。
ジョコビッチのバブリンカに対する言葉
決勝後、バブリンカに敗れたジョコビッチはこう語った。
「(バブリンカは)優勝にふさわしいプレーだった。すばらしいチャンピオンだと思う」
「バブリンカはトップ選手に仲間入りするだけの実績がある」
男子テニス界はジョコビッチ、マリー、フェデラー、ナダルらが「ビッグ4」と呼ばれ、4大大会の優勝のほとんどを彼ら4人で占めてきた。しかし、バブリンカが新たな時代を切り開いていく。もちろん、錦織圭も……。