内村航平、最強の挑戦者ベルニャエフの闘う理由と名言
偉大な挑戦者
ベルニャエフ
リオデジャネイロ五輪。10日、体操男子個人総合で内村航平が優勝し、金メダルを獲得した。ロンドン五輪に続く2連覇を達成するという快挙を成し遂げた。
しかし、ギリギリの闘いだった。
予選1位であり、最強の挑戦者とも言われていた宿敵オレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)と首位を争った。彼もまた芸術的で、驚異的な演技だった。
ベルニャエフの
闘う理由
何より、ベルニャエフには勝たなければならない、闘う理由があった。
祖国はウクライナ
ベルニャエフはソ連崩壊後、社会が混乱していた1993年にウクライナで生まれ。
そのウクライナは分裂状態で、財政も危機的状況がつづく祖国だった。彼はウクライナからの支援は受けず、練習など、ろくにできないような劣悪な環境の中、練習してきた。
支給される給料はおよそ1万円程度だったらしい。
もちろん、これだけ偉大な選手。
非常に良い条件で「国籍を変えて、出場しないか」とオファーは届いていた。実際、祖国の多くのアスリートが国籍を変えて可能性を探ろうとする中、彼は決意した。
家族や親戚、友などのいる、大切な母国に残ることを。
そして、祖国の誇りをかけて、戦ったのだ。
ベルニャエフはこう語る。
「ウクライナはこれまでも問題があったし、これからもそうだろう」
「選手養成の条件では中国や米国には遠く及ばない。しかし、われわれは頑張っている」
また、これについてTwitterでは次のように語られていた。
ベルニャエフ選手は、国から支援ほとんどなくて、練習場所も壊れてるとこばっかで、普段の練習は、ケガしないように練習してたらしい
故郷は戦地で、親とも会えんくて、でも母国で練習続けて、それで内村と争って、内村に勝っててもおかしなかった pic.twitter.com/uwz5zg1K67
— 麟太郎 (@SlimShady125) 2016年8月10日
こんな状況の中、彼はリオデジャネイロオリンピックに出場したのだ。
最後の一種目
体操男子個人総合の決勝では、その想いもあって、ベルニャエフは圧倒的な強さを見せた。内村航平をギリギリまで苦しめた。
ところが、最後の一種目で僅差で敗れる。
0.0099点
恐ろしいほどの僅差だった。
どれだけ悔しかったか、その想いは想像できないほど、だ。
試合後の
公式会見
一人の記者が内村にこんな質問を投げかけた。
「ミスター・ウチムラ、あなたは審判に好かれているから良い得点が取れると感じていますか?」
ところが、それをサポートするように、ベルニャエフはこう答えた。
「審判も個人のフィーリングは持っているだろうが、スコアに対してはフェアで神聖なもの。航平さんはキャリアの中でいつも高い得点をとっている。それは無駄な質問だ」
内村航平はもちろん素晴らしかったが、ベルニャエフもまた、金メダルに値する男だと思う。
実際、Twitterでは、こんな声があがっていた。
体操のベルニャエフ選手、素晴らしい人間性に感動。ウクライナの体操発展の為に、ぜひとも寄付したいくらいだ。
— オレンヂ@予言課長 (@sp_orange2525) 2016年8月11日
>> さらにベルニャエフの祖国ウクライナは14年から分裂状態で、器具は壊れ、練習施設はボロボロ。毎週のように試合に出て、活動費を稼ぐという恵まれない環境の中でやってきた。
寄付の口座開いてくれたら少ないけどお金だすわ…
— 山本まくや(劇薬) (@y_makuya) 2016年8月11日
内村航平、そして宿敵ベルニャエフ。
まさに近年稀に見る、偉大な勝負だった。
ベルニャエフ選手にも、力強い拍手をおくりたい。
彼のメダルもまた、金メダルに見える。