伊調馨に国民栄誉賞!五輪4連覇を成し遂げる7つの理由
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伊調馨に国民栄誉賞
伊調馨の国民栄誉賞が決まりました。
女子選手初の五輪4連覇を成し遂げたのだから、当然だと思います。
五輪4連覇だけではない。国際大会でもほぼ負けなし。連勝記録は189勝と圧倒的な強さを誇ってきたのだから。
伊調馨については次の記事を公開していて。これを公開した時に驚きました。とにかく、常人とは異なる思考の持ち主で、ある意味で、その思考は五輪4連覇以上に凄い。
逆にいえば、その非常識といえるほどの思考があったからこそ、4連覇を実現したともいえる。今回はその7つの「思考」。いえ、伊調馨の強さを生んだ「7つの理由」を紹介します。
理由1
「目標」
目標は金メダルではない。
「目標はオリンピックで金メダルを獲得することです」
これはオリンピックで金メダルを目指すアスリートからよく聞く言葉だと思う。でも伊調馨は違う。常に金メダル以上のモノを追求する。
ただ、金メダルを獲得するのではなく、「自分のレスリングで金メダルを獲得すること」を目指すわけです。
「もちろん金メダルを獲ります。でも、金メダル以上に私のレスリングで金メダルを獲りたい。そちらの方が大事だし、内容まで注目してもらえればうれしいです」
伊調馨
理由2
「評価」
試合後の自身に対する「評価」も非常識といえるほど厳しい。
もちろん、周囲に気を遣って、「金メダルを獲得できて、嬉しいです」と話していることもある。でも基本、その評価は厳しい。
たとえば、ロンドン五輪で3連覇を成し遂げた時はこう答えている。
「70点。悔いが残る……アンクルホールドにいったが得点に結びつかなかった。練習してきた、がぶりの体勢からの攻撃ができなかった」
伊調馨
さらにリオ五輪で4連覇を成し遂げた後も「内容はあまり良くなかった。30点」と答えた。4連覇を成し遂げようが、内容が良くなければ、満足できない。
加えて、以前はこうも語っていた。
「ちびっ子の頃から20年以上やってきたのに、それまでは感覚だけでやってきたので、レスリングの神髄を全く知らずにいました。それで“オリンピックチャンピオン”だなんて、恥ずかしくて」
伊調馨
金メダルを獲得しようが。世界選手権で優勝しようが。彼女の中ではそれでレスリングを知っていることにはならない。「レスリングの神髄を全く知らずにいた」と語るくらいなのだから、伊調馨の「評価」は果てしないほど高いレベルにあるわけです。
理由3
「練習」
あれだけ強い選手。男子と練習することはもちろんあると思う。
でも伊調馨は違う。時々、練習することが「ある」というレベルではなく、男子の「合宿」に参加してしまう。しかも、男子の「代表」合宿に、です。そして、すべての練習に参加し、全てのメニューをこなしてしまう。
「男子の代表合宿にも参加させていただきました……女子がオリンピックや世界選手権でメダルをいっぱい獲れるのは、『まだ歴史が浅いから』とか、『競技人口が少ないから』という偏見みたいものがあったというか……私が「合宿に参加させてください」と言っても、『どうせ朝練だけだろう』『毎日は来ないよな』とナメられていたと思います……私は図々しくすべての練習に参加して、全部のメニューをこなしたんですよ。……『女子もここまでやるから、世界で勝てるんだな』と、認めてもらえるようになりました」
伊調馨
目標と評価が高いだけではない。この圧倒的な練習、努力も彼女の強さを築き上げている。
理由4
強い相手を求める
男子の代表合宿に参加してしまうように、常に強い相手を求めている。
五輪は連覇し、国際大会ではまず負けない。連勝記録は189勝。だからこそ、伊調馨は刺激を求めるように、強い相手を求める。
「物足りないというか、モチベーションがなかなか上がらないというか。私を倒して世界に行きたいという若者が出て来てほしいのだけど……」
自分のモチベーションを高める意味でも強い相手を求めている。実際、強い相手であれば、あるほど、練習や試合もできるらしい。弱い人だと疲れてしまうくらいに。
「弱い人が相手だと疲れるし、痛いけど、強い人が相手ならズーッとやっていられます」
理由5
戦うのは「みんなのため」
戦うのは「自分」だけのためではない。
「応援してくれた方に感謝しています」という選手の方は多い。でも伊調馨のそれは少し違う。敗れた選手のこと、出られなかった選手のことも考え、まさに「みんなのため」に金メダルを獲得しなければならないと考えているわけです。
「オリンピックってみんなの夢なんじゃないかと 自分だけじゃなくて、その出られなかった人たちだったり、家族だったり、今までお世話になった人たちという、みんなの夢ですね、オリンピックは」
伊調馨
理由6
自分へのご褒美
あなたはどんなときに「自分にご褒美」を与えるだろうか。
何かがうまくいった時に高級レストランで食事をしたり、自分に何かプレゼントしたりする人も多いと思う。
でも伊調馨はまるで違う。うまくいった時ではなく、うまくいかなかった時、イマイチだった時に自分にご褒美を与えるわけです。
「ワインなどを時々飲みますが、『いい練習ができたから、自分へのご褒美』というよりは、『今日もイマイチだったけど、明日もがんばろう』と自分を励ますお酒ですかね。だから、外で食事をするときは、“楽しく”が基本です」
伊調馨
確かに考えてみると、良い時は放っておいても楽しいもの。
問題は悪い時、イマイチだった時です。そんなときにこそ、自分を励まし、楽しくするわけです(伊調馨から学んだことの中でも最も好きなのがコレ)。
理由7
圧倒的「余裕」
オリンピックの決勝の前。
たとえば、決勝の前日などは眠れない選手も少なくない。
錦織選手も「4大大会の決勝などの時は、眠らずに出たこともあります」と語っていたが、まさに緊張との戦いなのだと思う。
ところが、伊調馨は全く違う。
「決勝戦の前には『あと1試合でオリンピックが終わっちゃうんだ……』と寂しくなっていました」
伊調馨
決勝の前、「あと1試合で終わっちゃうんだ」と寂しくなるわけです。この言葉は伊調馨の圧倒的な強さを表している。
金メダル以上の「自分のレスリングで金メダルを獲得すること」を目標にし、練習し、努力を続け、常に結果を出し続けてきたからこそ、到達できる境地だと思う。この圧倒的「余裕」がライバルに対し、伊調馨を圧倒的優位に立たせているのだろう。
伊調馨は実績だけでなく、その思考も素晴らしい選手。まだまだ活躍し、偉業を成し遂げてほしい。心からそう思ってしまいます。
国民栄誉賞、本当におめでとうございます。